社会課題を解決する事業は、誰がお金を払うのか?

社会課題を解決したい。生活者にとって本当に必要なものをつくりたい。そう考えて事業を始めても、避けて通れない問いがあります。「その価値に、誰がお金を払うのか」です。社会的に必要なことと、事業として対価が発生することは必ずしも同じではありません。

My Land自身も、食と健康の専門性を日常へ届けたいと考える中で、「最終的に価値を届けたい相手」と「事業として対価をいただく相手」をどうつなぐかを考え続けています。本記事では、社会課題を一過性の活動ではなく、継続する事業へ変えるための「価値とお金の流れ」について考えます。
社会課題の解決を事業にするときに起きる課題
社会課題には、「困っている本人がお金を払えるとは限らない」という特徴があります。
必要性が高くても、本人に支払う余力がなかったり、まだ問題を自覚していなかったり、将来のための価値にお金を払う優先順位が低かったりすることがあります。
食と健康もその一つです。不調や病気が起きる前から専門家の知識に触れられれば選択肢は増えます。しかし、健康な時から自分で専門家を探し、継続的に対価を払う人だけを対象にすると、届く範囲には限界があります。
だからこそ、社会課題を事業として考えるときには「誰を助けたいか」と同時に、「誰にどのような価値が生まれ、その価値に誰が対価を払うのか」を考える必要があります。
「良いことだから続く」だけでは十分ではない理由
1.受益者と支払者が同じとは限らない
サービスを利用して価値を受け取る生活者と、その仕組みに費用を支払う主体が異なることがあります。この構造を整理せず、「必要としている人からお金をもらう」ことだけを考えると、事業そのものが成立しない可能性があります。
2.社会的意義だけでは企業の意思決定につながらない
企業が社会課題に取り組む意義は大きい一方、事業として継続するには、自社にどのような価値が生まれるのかも必要です。売上、継続、ブランド、顧客との関係、新たな市場など、企業様が投資を続けられる理由をつくらなければなりません。
3.無償で提供し続けると、社会実装できなくなる
社会的に良い取り組みほど、「無料で届けたい」という発想になりやすいものです。しかし、人件費や専門家費、運営費が回らなければ、活動自体が続きません。社会性と収益性を対立させないことが重要です。
4.「誰からお金をもらうか」から考えると本質を見失う
反対に、収益モデルだけから考えることにも注意が必要です。先に売りやすい商品を決めてしまうと、そもそも何の社会課題を解決したかったのかが分からなくなる場合があります。
まず課題と受益者を定義し、その後に価値の流れと対価の流れを設計する。この順番が重要だと考えています。
My Landが考える「社会課題と事業」の本質
My Landでは、社会課題を解決する事業を考える際、「受益者」「支払者」「実装者」を分けて整理することが重要だと考えています。

- 受益者:その仕組みによって暮らしや行動がより良くなる人は誰か
- 支払者:その変化によって事業上の価値を得る主体は誰か
- 実装者:その価値を日常の接点へ届けられる主体は誰か
例えばMy Landが目指す「食と健康の専門性が暮らしの中に自然にある社会」で、最終的な受益者は生活者です。
しかし、生活者一人ひとりに「専門家へ相談してください」と呼びかけるだけが方法ではありません。
食品、サービス、職場、店舗、EC、地域など、すでに生活者との接点を持つ企業様と共創し、その中へ専門性を実装できれば、生活者は日常の中で自然に専門性へ触れられます。
企業にとっても、その取り組みが商品の価値向上、サービスの継続、生活者からの信頼、新しい事業機会などにつながれば、投資する理由が生まれます。
つまり、社会課題の解決と企業の事業価値を別々に考えるのではなく、両方が生まれる仕組みをつくることが重要です。
企業が社会課題型の事業を考える際に考えたいポイント
1.最終的に誰のどんな状態を変えたいのか
最初に置くべきなのは商品でも売上でもありません。「誰が、現在どんな状態にあり、どんな未来へ変わればよいのか」です。社会課題を大きな言葉のまま扱わず、生活者の具体的な暮らしまで落とし込みます。
2.その課題が解決されることで、誰に価値が生まれるのか
生活者だけでなく、企業、自治体、医療、地域など、課題が改善したときに価値を得る主体を洗い出します。受益者以外にも価値が生まれているなら、そこに事業モデルをつくれる可能性があります。
3.企業様の事業価値と接続できているか
「社会に良いから取り組む」だけでは継続が難しくなります。自社の商品やサービスとの関係、ブランド価値、顧客体験、継続率、新規事業など、企業様自身が取り組み続ける理由まで設計する必要があります。
4.既存の生活者接点を活用できないか
新しいサービスをゼロから立ち上げることだけが社会課題解決ではありません。店舗、商品、職場、EC、メディア、地域ネットワークなど、企業がすでに持つ接点に新しい価値を実装する方法もあります。
5.小さく実証できるか
最初から大きな社会変革を目指す必要はありません。対象者を絞り、課題仮説と事業仮説をPoCで確かめます。生活者に変化が生まれるかだけでなく、企業に事業価値が生まれるかも同時に検証します。
6.続けるほど知見が蓄積する構造になっているか
単発のイベントや制作物で終わらず、生活者インサイト、成果データ、専門家の知見、成功・失敗事例などが蓄積される仕組みにします。それが次の事業や他地域・他企業への横展開につながります。
例えば「健康な時から専門家と出会える社会」を考える場合
仮に、「健康な時から食と健康の専門家に出会える人を増やしたい」という社会課題を考えます。
生活者一人ひとりへ有料相談サービスを販売する方法もあります。しかし、それだけでは日頃から健康サービスを探している人にしか届かない可能性があります。
一方、食品メーカーの商品購入後のサポート、スーパーの売場、企業の福利厚生、ECの購入体験などへ専門性を組み込む方法も考えられます。
生活者にとっては、専門家をわざわざ探さなくても必要な情報や選択肢に触れられる。企業にとっては、商品・サービスの価値や顧客体験を高められる。専門家にとっては、病院など従来の職域以外でも専門性を発揮できる。
このように三者の価値が重なる場所を探すことで、社会課題の解決を「誰かの善意」ではなく、続く事業へ変えていくことができます。
My Landが目指していること
My Land自身も、この問いを考え続けています。
私たちが最終的に価値を届けたいのは、生活者です。一方、現在の事業では、生活者との接点を持つ企業と共創し、商品・サービス・職場・地域などへ専門性を実装することを重視しています。
これは、単に企業から依頼を受け、専門家を紹介するためではありません。
企業が持つ社会実装力、専門家が持つ知識、生活者が持つ日々の現実をつなぎ、それぞれに価値が生まれる仕組みをつくる。その仕組みが事業として継続することで、食と健康の専門性が一部の人だけのものではなく、暮らしの中に自然に存在する健康インフラになっていくと考えています。
まとめ
社会課題を解決する事業を考えるとき、「誰がお金を払うのか」は避けるべき問いではありません。むしろ、社会課題の解決を継続させるために必要な問いです。
重要なのは、困っている人から必ず対価を得ようとすることでも、社会的意義を理由に無償化することでもありません。「誰に変化を生みたいのか」「その変化によって誰に価値が生まれるのか」「誰がその価値に投資できるのか」を整理することです。
社会性と経済性が重なる場所を探すこと。それが、社会課題を一時的な活動ではなく、社会に残り続ける仕組みへ変える第一歩ではないでしょうか。
社会課題から事業を設計する段階からご相談いただけます
My Landでは、「管理栄養士に何を依頼するか」からではなく、「誰のどのような社会・生活課題を変えたいのか」から企業様と一緒に考えます。
生活者理解、健康価値開発、専門家との共創、PoC、成果検証までをつなぎ、社会的な価値と企業様の事業価値が両立する仕組みを設計します。
具体的な商品や施策が決まっていない段階でもご相談いただけます。







