食品の商品開発を社内だけで考えていませんか?専門家と共創する意味

食品の商品開発では、自社の商品や素材を最もよく知る社内メンバーだからこそ、質の高い議論ができます。一方で、長く商品に向き合っているからこそ、「この商品の強みはこれ」「このターゲットに届けるもの」といった前提から抜け出しにくくなることもあります。
そこで役立つのが、管理栄養士をはじめとした外部専門家との共創です。ただし、専門家に「正解を教えてもらう」ことが目的ではありません。自社とは異なる視点を入れることで、これまでになかった問いを生み出し、商品の可能性を捉え直すことに意味があります。
今回は、食品の商品開発に外部専門家が関わる意味と、共創を事業につなげるための考え方を整理します。
食品の商品開発で企業がつまずきやすいポイント

自社商品の「当たり前」から抜け出しにくい
自社の商品や素材について、社内には多くの知識があります。原材料、製法、味、歴史、販売先、これまでのお客様の反応など、外部の人には分からない情報を持っていることは大きな強みです。
一方で、その知識があるからこそ、「この商品はこういうもの」「この食べ方が一般的」「この層に販売するもの」といった前提が固定される場合があります。
商品そのものが変わっていなくても、見る人が変われば、見つかる価値は変わります。商品開発に外部の視点を取り入れる意味の一つは、既存の前提を一度外して商品を見直せることにあります。
商品の特徴から企画を考えてしまう
「この素材を使って何ができるだろう」「この成分をどう訴求しよう」と、自社が持っているものから商品企画を考えることは自然です。
しかし、商品や素材の特徴だけを起点にすると、「つくれるもの」の議論にはなっても、「必要とされるもの」の議論まで進まない場合があります。
そこで必要になるのが、「誰が、どんな場面で困っているのか」「現在は何を選んでいるのか」「なぜ今の選択肢では十分ではないのか」という生活者側からの問いです。
社内にない専門領域を十分に検討できない
食品の商品開発では、製造、品質、営業、マーケティングなど、さまざまな視点が必要です。さらに健康をテーマにする場合には、栄養、食生活、ライフステージ、生活習慣など、別の専門性が必要になることがあります。
すべての専門性を社内に持つ必要はありません。必要なタイミングで外部の専門家と共創することで、自社だけでは見えていなかった論点を検討できるようになります。
専門家に「答え」を求めすぎてしまう
専門家に相談するとき、「この商品は健康によいですか?」「誰におすすめですか?」「どんな商品にすれば売れますか?」と、答えを求めたくなることがあります。
しかし、新しい商品や事業には、専門家であっても最初から正解が分かっているとは限りません。むしろ重要なのは、専門家との対話によって「何を考えなければならないのか」が見えてくることです。
なぜ「専門家に相談する」だけでは十分ではないのか
専門家を招けば、自動的に新しい商品アイデアが生まれるわけではありません。
専門家に何を聞くのか、どの段階から参画してもらうのか、専門家から得た視点をどのように商品や事業へ戻すのか。その設計がなければ、せっかく専門家と話しても「参考になる意見を聞けた」で終わってしまいます。
例えば、商品について専門家に意見を求める場合でも、問いによって得られる情報は大きく変わります。

- 「この商品をどう思いますか?」ではなく「どんな生活課題を持つ人なら、この商品の価値を感じる可能性がありますか?」
- 「何を訴求すればよいですか?」ではなく「生活者がこの商品を取り入れにくい理由は何だと思いますか?」
- 「新商品を考えてください」ではなく「この素材と相性のある生活場面には何がありますか?」
- 「誰におすすめですか?」ではなく「どんな人に、どのタイミングで届けると意味がありそうですか?」
答えそのものよりも、今まで社内になかった問いを持ち込むこと。それが、専門家との共創における重要な価値の一つです。
京都府食品産業協会の研修会への登壇から考えたこと
株式会社My Landでは、2026年6月、一般社団法人京都府食品産業協会の研修会に登壇する機会をいただきました。食品に関わる事業者の皆様に向けて、管理栄養士という専門性や、食品が持つ価値を健康・生活者の視点から考えることについてお話ししました。
このような機会の意味は、専門知識を一方的に伝えることだけではありません。
普段は製造、販売、経営など、それぞれの立場から食品を見ている方が、管理栄養士という異なる専門性を通して商品を見ることで、「こんな捉え方もできるのではないか」と視点を増やすきっかけになります。
これは、専門家が企業の代わりに商品を考えるということではありません。
企業が持つ商品・素材・技術についての知識と、専門家が持つ健康・食生活・生活者についての知識。その2つを掛け合わせることで、どちらか一方だけでは生まれにくい問いや仮説をつくることができます。
だからこそ、My Landでは専門家との関わりを「完成した商品を確認してもらう場」だけではなく、「商品や事業の可能性を一緒に考える場」に広げることが重要だと考えています。
専門家との共創で重要なのは「答え」より「問い」
1.「商品の強みは何か」から「誰の何を変えられるか」へ
商品開発では、自社商品の強みを整理することが欠かせません。しかし、強みそのものが生活者にとっての価値になるとは限りません。
外部専門家との対話では、「この商品には何が含まれているか」だけでなく、「その特徴は誰の生活にどのような意味を持つのか」と問い直します。
商品を中心に考えるだけでは見えなかった用途や対象者が、生活者を中心に考えることで見えてくる場合があります。
2.「何を伝えるか」から「なぜ選ばれないのか」へ
商品の魅力をどう伝えるかを考える前に、そもそも生活者が選ばない理由を考えることも重要です。
知られていないのか、価格なのか、食べ方が分からないのか、調理が面倒なのか、自分に必要な商品だと感じられていないのか。理由によって必要な施策は変わります。
専門家が生活者との接点を持っている場合、その知見は商品開発だけでなく、販促や情報発信、サービス設計にも生かせます。
3.「商品を作る」から「仮説を確かめる」へ
新しいアイデアが出たからといって、すぐに商品化する必要はありません。
「本当にこの課題はあるのか」「この価値を生活者は必要としているのか」「この食べ方なら取り入れられるのか」といった仮説を、小さく確かめる方法もあります。
インタビュー、アンケート、試食、モニター、PoCなどを通じて反応を確かめれば、商品化する前に改善できることもあります。
専門家を企画段階から参画させる意味は、アイデアを増やすことだけではなく、何を検証すべきかを一緒に考えられることにもあります。
4.「専門家に任せる」から「一緒に考える」へ
外部専門家との連携では、専門家に丸ごと任せる形でも、企業から決められた作業だけを依頼する形でも、共創の可能性を十分に活かせないことがあります。
企業には、商品の背景や技術、事業として実現できることがあります。専門家には、食・健康に関する知識や生活者を見る視点があります。双方が持っている情報を出し合い、一緒に仮説をつくることが共創です。
商品開発で専門家に聞いてみたい5つの問い
専門家との打ち合わせを予定している場合は、単に「商品について意見をください」と依頼するのではなく、次のような問いを準備してみてください。
- この商品・素材は、どんな生活課題を持つ人と接点がありそうか
- 生活者が日常に取り入れようとしたとき、どんな障壁がありそうか
- 現在想定しているターゲット以外に、可能性のある対象者はいないか
- 商品の価値を確かめるために、どんな生活者の声を聞くべきか
- 商品化・販売拡大の前に、何を小さく検証するとよいか
この5つは、専門家に「正解を出してもらうための質問」ではありません。
企業と専門家が同じ課題について考え、次に確かめるべきことを見つけるための問いです。
自社で検討する際に整理したいこと
外部専門家との共創を検討するときは、「どんな専門家を呼ぶか」から始める前に、まず自社側の目的を整理することが重要です。

- 今、商品開発のどこで行き詰まっているのか
- 社内にある知識と、足りていない視点は何か
- 誰のどんな課題について理解を深めたいのか
- 専門家から答えが欲しいのか、一緒に仮説をつくりたいのか
- 専門家との対話後、何につなげたいのか
- 生活者に確認すべき仮説は何か
- 検証後に商品・サービスをどう改善するのか
目的が整理されていれば、その課題に合った専門家を選びやすくなります。
反対に、「とりあえず管理栄養士に聞いてみよう」という状態では、専門家の知見を十分に事業へ活かしきれない可能性があります。
My Landが考える専門家との共創
My Landでは、専門家に参画してもらうこと自体を目的にはしていません。最初に考えるのは、「誰のどんな課題を解決し、どんな未来をつくりたいのか」です。
そのうえで、企業が持つ商品・素材・技術・ブランド・顧客接点と、管理栄養士をはじめとした専門家の知識、生活者のリアルな課題を組み合わせます。
必要なのは「管理栄養士を1名紹介すること」ではなく、どの段階で、どの専門性を、どのような問いとともにプロジェクトへ取り入れるのかを設計することです。
専門家は、監修や制作を担うだけの存在ではありません。課題設定、企画、仮説づくり、検証、改善にも参画できる共創者です。
そしてMy Landが担いたいのは、企業と専門家の間に入り、単に人をつなぐのではなく、異なる知識や視点が事業の前進につながる関係とプロセスを設計することです。
まとめ
外部専門家と共創する価値は、企業が知らない「正解」を教えてもらうことだけではありません。
一つ目は、自社では当たり前になっていた前提を別の視点から見直せること。二つ目は、商品ではなく生活者や社会課題から問いを立て直せること。そして三つ目は、新しいアイデアをすぐ商品化するのではなく、何を検証すべきかまで一緒に考えられることです。
商品について最も詳しい企業と、生活者や食・健康について異なる知見を持つ専門家。それぞれの専門性を掛け合わせることで、一方だけでは見つからなかった可能性が見えてくることがあります。
商品開発に行き詰まったとき、「次の商品案は何か」を考える前に、「今のメンバーだけでは、どんな問いが抜けているだろうか」と考えてみることが、新しい一歩になるかもしれません。
商品開発に外部専門家の視点を取り入れたい企業様へ
My Landでは、商品が完成してからの監修やコメント提供だけでなく、企画段階から専門家と共創するプロジェクトについてもご相談いただけます。
「まだ商品案が決まっていない」「何を専門家に相談すればよいか分からない」「社内だけで検討しているが、新しい視点が欲しい」といった段階でも構いません。
企業が抱えている課題を整理し、必要な専門性、専門家との対話の設計、生活者調査、PoC、その後の商品・サービスへの展開まで、目的に応じた進め方を一緒に考えます。







