食品の商品価値を「食べてみたい」に変える専門家共創の設計

食品や農産物の魅力を伝えようとすると、「甘い」「食感がよい」「こだわって育てた」といった商品の特徴を中心に発信しがちです。しかし、生活者が知りたいのは特徴だけではありません。「自分ならどう食べるか」「家庭で簡単に取り入れられるか」まで想像できて初めて、商品への関心が具体的な行動へ近づきます。
では、食品の商品価値を、生活者が試してみたくなる情報へ変えるには何が必要なのでしょうか。今回は、農産物のレシピ・販促コンテンツ制作の取り組みから見えた、商品価値を生活者の体験へ翻訳する考え方を整理します。
食品の魅力発信で企業様がつまずきやすいポイント
商品の「特徴」を伝えることが目的になっている
生産方法、産地、味、食感など、商品の特徴を丁寧に説明することは重要です。ただし、特徴を伝えただけでは、生活者が「自分の食卓でどう取り入れるか」まで想像できるとは限りません。
食品では、商品の特徴と実際の食体験の間に距離があります。その距離を埋める情報がなければ、「良さは分かったけれど、どう食べればよいか分からない」という状態になってしまいます。
レシピを作ること自体が目的になる
商品を使ったレシピは、食品の販促でよく使われる方法です。一方で、「その商品でなければならない理由」が弱いレシピでは、料理そのものが主役になり、商品の特徴が埋もれてしまうことがあります。
重要なのはレシピ数を増やすことではなく、商品の味、食感、形状、利用シーンなどを踏まえ、「この商品だから試してみたい」と思える食べ方を設計することです。
見栄えと家庭での再現性が両立していない
販促用コンテンツでは、魅力的に見せるための写真や盛り付けが求められます。しかし、生活者にとって工程が複雑だったり、特殊な材料が必要だったりすると、実際の行動にはつながりにくくなります。
「見ておいしそう」と感じてもらうことと、「これなら自分にもできそう」と感じてもらうこと。その両方を考える必要があります。
文章・写真・専門家が別々に設計されている
レシピ、料理写真、専門家コメントなどをそれぞれ別々に制作すると、伝えたい商品の価値がずれることがあります。写真は豪華でもレシピの目的と合っていない、専門家の説明だけが難しい、といった状態です。
必要なのは制作物を増やすことではなく、「生活者に何を感じ、どう行動してほしいのか」を共通の軸として、それぞれの要素を設計することです。
なぜ「商品の特徴を説明するだけ」では十分ではないのか
食品には、実際に食べるまで価値のすべてを伝えにくいという特徴があります。だからこそ、商品の情報をそのまま伝えるのではなく、生活者が体験を想像できるところまで翻訳する必要があります。
たとえば「甘みがある」という特徴があったとしても、その言葉だけでは実際の食卓は想像できません。「加熱すると甘みを感じやすい」「素材の形を生かした食べ方ができる」など、具体的な調理や利用場面まで示されることで、商品価値が生活者の日常とつながります。
ここで重要になるのが、商品の特徴、生活者の行動、専門家の知見を別々に考えないことです。
- 誰に届けたい商品なのか
- 商品のどの特徴を体験してほしいのか
- どのような食べ方なら特徴を実感しやすいのか
- 生活者が家庭で再現できるか
- 写真や言葉でどのように体験を想像してもらうか
- 完成したコンテンツをどこで活用するのか
この設計ができて初めて、レシピは単なる料理情報ではなく、商品の価値を生活者へ届ける接点になります。
実際の取り組みから見えたこと
ある農産物の販促支援では、完熟たまねぎの魅力を生活者へ伝え、具体的な食べ方のイメージにつなげることが課題となっていました。
素材の特徴を説明するだけでは、「どのように調理するのか」「家庭でどう楽しめるのか」まで想像しにくいため、My Landでは商品ターゲットや制作目的を整理したうえで、レシピ開発に適した管理栄養士を選定しました。
管理栄養士は、完熟たまねぎの甘みや食感、調理後の特徴を踏まえながら、素材そのものを主役にしたレシピを検討しました。同時に、家庭で取り入れやすい材料や工程、食べ方の説明も整理しています。
さらに、レシピの意図が視覚でも伝わるように、フードコーディネートや料理写真の撮影まで連動させました。文章と写真を別々に制作するのではなく、「どのような商品価値を生活者へ届けるのか」という目的を共有しながら制作を進めています。
完成したコンテンツは、レシピ、料理写真、食べ方の提案、管理栄養士のプロフィールを組み合わせ、商品ページや販促物などで展開しやすい構成へ整理しました。
この取り組みから考えたいポイント
1.商品価値を「生活者ができること」へ変換する
「甘い」「栄養価が高い」「希少な素材である」といった商品情報だけでは、生活者の行動にはまだ距離があります。
商品価値を伝える際には、「だから、どんな食べ方ができるのか」「どんな食卓が生まれるのか」まで考えることが重要です。商品起点の情報を、生活者起点の体験へ変換するという視点が必要になります。
2.専門家に完成品だけを依頼しない
専門家の役割を、完成した文章の監修やレシピ制作だけに限定する必要はありません。
商品の特徴をどう料理へ落とし込むか、家庭で再現できる工程になっているか、どのような表現なら生活者に伝わりやすいか。こうした企画段階から専門性を取り入れることで、専門家の知見をより広く活かせます。
3.「おいしそう」と「自分にもできそう」を両立する
食品のコンテンツでは、視覚的な魅力だけでなく再現性も重要です。
商品の魅力を最大限に見せながらも、生活者にとって材料や工程のハードルが高すぎないかを確認します。プロが作る美しい料理ではなく、生活者が次の行動へ進める体験として設計することがポイントです。
4.制作物ではなく「活用まで」を先に考える
レシピを作った後で掲載場所を考えるのではなく、商品ページ、店頭、SNS、リーフレットなど、どこでどのように使うのかを先に整理することで、必要な写真や文章の設計も変わります。
1つの企画から複数の接点へ展開できれば、制作した知的資産をより活用しやすくなります。
5.商品価値・専門家価値・生活者価値を分断しない
商品を売ることだけ、専門家の専門性を見せることだけ、生活者に役立つ情報を提供することだけを考えるのではなく、3つの価値が重なる場所を設計することが重要です。
企業様が伝えたい商品価値があり、専門家だからこそ提供できる視点があり、それが生活者にとって実践しやすい情報になる。この重なりをつくることが、食・健康領域における専門家共創の1つの形だとMy Landは考えています。

自社で検討する際に整理したいこと
食品や農産物の販促でレシピや専門家コンテンツを検討する場合は、制作会社や専門家を探す前に、次の点を整理してみてください。
- 誰に商品を届けたいのか
- その人に商品のどの価値を感じてほしいのか
- 特徴をどのような体験へ変換できるのか
- 購入後にどのように食べてほしいのか
- 専門家にはどの段階から参画してほしいのか
- 完成したコンテンツをどの媒体で活用するのか
- 単発制作で終わらず、今後の商品開発や販促へ活かせる情報はないか
ここまで整理すると、「レシピを3品作る」といった発注内容から、「商品価値をどのように生活者へ届けるか」という事業・マーケティング上の目的へ視点を広げることができます。
My Landが考える専門家との共創
My Landでは、専門家に参画してもらうこと自体を目的にはしていません。
最初に考えるのは、「誰のどんな課題を解決し、どんな未来をつくりたいのか」です。そのうえで、必要な専門性、商品やサービス、生活者との接点を組み合わせていきます。
管理栄養士が必要な案件であっても、求められる役割は毎回同じではありません。レシピ開発が得意な人、生活者目線で情報を整理できる人、商品開発や調査に関われる人など、目的によって必要な専門性は変わります。
そのためMy Landでは、専門家の選定だけでなく、企業様が実現したいことの整理、専門家が担う役割の設計、制作・実施の進行、生活者へ届く形への変換までを一体で考えます。
企業様・専門家・生活者の3者をつなぎ、専門性を事業価値と生活者価値へ変えていく。
それが、My Landが目指す「専門性の社会実装」です。
まとめ
食品や農産物の魅力を伝えるとき、重要なのは情報量を増やすことではありません。第一に、商品の特徴を生活者が具体的に体験できる「食べ方」や「利用場面」へ変換すること。第二に、専門家を完成品の監修者だけにせず、商品価値をどう届けるかという設計段階から専門性を取り入れること。第三に、レシピ、写真、言葉、販売接点をバラバラに考えず、1つの生活者体験として設計することです。
レシピ制作を検討する際も、「何品作るか」から始めるのではなく、「誰にどんな商品価値を届け、その後どのような行動につなげたいのか」から考えることで、専門家との共創をより事業に活かしやすくなります。
商品価値を生活者へ届ける方法から、一緒に整理しませんか
「商品の特徴はあるものの、生活者へどう伝えればよいか分からない」「レシピ、専門家、販促をどのように組み合わせればよいか整理できていない」といった段階からご相談いただけます。
My Landでは、専門家の選定だけでなく、誰に何を届けるのかという企画段階から、商品・サービス・PoC・コンテンツなど目的に合わせた専門家共創の設計をご一緒します。依頼する制作物や専門家の役割がまだ固まっていない段階でも、まずは課題や実現したいことをお聞かせください。







